1873年(明治6)~ 1957年(昭和32) 愛知県に生まれる。 はじめ京都の幸野楳嶺などに学ぶが、上京して橋本雅邦に師事し、狩野派の技法を修得。 四条派と狩野派の穏やかな調和を試みた作風で高い評価を得る。 文展開設時には審査員に任命され、以後官展を舞台に作品を発表。 日本の自然とその中で暮らす人々の素朴な生活に着目し、情趣豊かな作品を遺した。
1913年(大正2) 182.6×99.7 cm 第7回文展に出品され好評を得た作である。水郷の夕べに木橋の上を家路へと急ぐ漁夫と子どもを月の光が淡く暖かく照らしている。画家の温和な性情と平和な自然観が一致した牧歌的な情緒あふれる一幅である。
1942年(昭和17)頃 44.5×56.8 cm 春雨に煙る中、筧の向こうには山桜がぼんやりと浮かび、雨にしっとり濡れる木々や若葉が美しい。水車、草叢、小路を歩む農婦の姿を通して、自然の中に息づく生活の匂いが感じられ、まさに日本人の感性に響く秀作といえる。