1875年(明治8)~ 1949年(昭和24) 京都に生まれる。 はじめ鈴木松年に、その後、幸野楳嶺や竹内栖鳳に師事する。 官展などで京風俗や古典文学に想を得た作品を次々と発表し、画家として頭角を現す。 昭和期には簡潔で美しい線、無駄の無い造形、明るくしかも抑えられた色彩などに特色を見せながら、 内面的な深みを加え、高い気品を備えた女性像を確立させた。
1914年(大正3) 153.0×84.0 cm 「朝顔日記」のヒロイン深雪を描いたもの。恋人からもらった扇に見入っている最中、人の気配を感じ、あわてて袂に隠して振り向いたところが描かれている。恋人を想う娘のうぶで可憐な姿をとらえた、松園の大正期を代表する名作である。
1944年(昭和19) 73.0×86.0 cm 欄干に寄りかかる若妻を簡潔な構図でまとめ、しかも日本画独特の余白、つまり空間の持つ奥深さと妙味を存分に発揮している。松園69歳、円熟期の作品であり、筆の冴が見事である。気品ある女性像を理想とする松園芸術の昭和期の傑作といえる。